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GIGANIC
人類が人種の壁を乗り越えた近未来―文明は進歩の道をひた走り、都市空間は自身を際限なく拡張し続け、その様相を大きく変えていった。
コンピューターの機能も極大化し、効率的な生産システムを形成して人間から労働という概念を失わせた。クライアント(高知識層)と公務員
以外の女性は全て捕獲され、売買の対象となった。実力のみが機能する世界で富裕な者達と貧しい者達の二極化が進み、目の前に天を衝く
超高層ビル群を臨んで、美女とワイングラスと共に静かなひと時を堪能する壮年がいる一方、ビルの隙間をぬう、瘴気の漂う暗い地上を
行き先も無いままさまよう若者の姿が対立構図のように生じた。混沌の様で、効率化した世界は、新しい問題を内包していた。かつて国という
システムの中で恩恵に与っていた人々は、変化に対応出来ずアイデンティティの喪失や、富の拡散に悩まされた。この事がまず貧困層の間に
狭小な人種的ネットワークを生んだ。やがて利害を共有する上位者達が働きかけ、人種差別を誘発させようとする犯罪組織に発展した。
この組織は"BLACK GROUP"と呼ばれ、世界システムに対する不安を一気に増大させた。この状況下で秩序の維持のために活躍し、希望と尊敬の
まなざしを集めるようになった国際組織があった。国際警察、"GIGANIC"の構成員達は選りすぐりのエリートで、過酷な訓練と薬物の力に
より身体能力が何倍もあり、高い検挙率、任務達成率を誇る。優秀な"GIGANIC"のメンバー達は、人種的偏見と暴力過剰に陥ったBLACK GROUP
を地上から消し去るため、今日もパトロールに出るのだった。
STORY 1 カーレイルという女
超高層ビルが際限無く並ぶ、湾岸に面した巨大都市。建物外のあらゆる場所に監視カメラが設置され、ネットワークを介してリアルタイム
にコンピューターが情報処理し、異常を認知すると、オペレーターが現場に伝える。ハイウェイの流れの中に、真っ赤なコルベットがその
スタイリッシュなフォルムを際立たせていた。シートにはウェーブのかかった黒髪、引き締まっていながらもやわらかそうな肢体つきの
美しい女性が、サングラスをして、ルージュの濡れかかった艶を放つ、細く吸いつくような口元を微笑ませている。交差点に差し掛かり、
安定感のあるホイールが緩やかに駆動を停止する。女性の曲線美を上手くアピールする、心地良い素材のスーツに身を包み、周囲の
ドライバーや歩行者の視線を集める。車内にはノリのいいHIPHOPが流れている。ステレオの表示が、音調の変化に合わせて波打っている。
そのころ管制室では、突然同時多発的に起こった暴動を検知していた。監視カメラの映像をサブルーチンが解析し、瞬時に人物や被害状況が
特定される。混線や処理速度の乱れは生じ得ない。マス目状に微細に区切られた3Dマップにより、場所も容易に特定出来る。カーレイルは
無線の受信を示すランプが点滅したのに気付き、同時にステレオのボリュームを絞った。
「第4エリア23ブロック B15地区でBLACK GROUPによる暴動発生 付近のパトロールは現場に急行」
カーレイルは無線を聞き、現在位置を確認し、目標地点を入力して自動運転に切り替えた。あとはナビゲーションが道路の混雑状況、
歩行者等外部要因を考慮に入れた最短経路を計算し、車体をコントロールしてくれる。その間オートマ銃の残弾を確認しつつ、特定された
人物の個人情報に一様に目を通した。認知科学系の大学生で、過去2度のボランティア活動の経験ありという、ごく普通の履歴だ。顔写真を
見ても、特徴的な所の無い、どこにでも居そうな顔つきをしている。信頼度は80%。しかし偽造に決まっている。相手はBLACK GROUPの人間に
違い無かった。目的地を修正しつつ、犯人に接近していく。六気筒の高性能オプションエンジンがうなりをあげた。
カーレイルは貧民街の一角に車をドリフトさせて急停車し、カチャっとドアを開けるとすぐに臨戦態勢に入った。年中暗く人気の無いこの
区域は監視も行き届いておらず、足を頼りに犯人を捜すしか無い。普通の犯罪者なら慌てるか怖気づいて身柄を晒してしまう所だが、
今回の相手は冷静に、捜査網を撹乱する逃げ道を選んだ。普段の駆け引きが巡航ミサイルを装備した特殊部隊VS偽造した30年前の火器を
使うゲリラ程の差があるものばかりだったので、多少の侮りがあった。
「!!まてっ」
スーツ姿に長髪の影が目の前を横切る。カーレイルはグラマーな体をハイヒールで支えながら、入り組んだ路地を追跡する。距離を
縮めていき、犯人と並ぶ。その時。
「そこっ!!」
カーレイルは犯人が背中越しに向けた銃口を驚くべき反射神経と正確さで撃ち落とす。
「チッ」
犯人の表情が一瞬曇る。
「動くな!」
カーレイルはなおも逃走を続けようとする犯人に対し拳銃を構え、警告した。犯人が立ち止まる。利口で思慮深そうな中に、鋭利な
ナイフのような思いつめた感じの印象がある。カーレイルは片手に銃を構えたまま手続きのように、犯人にゆっくり歩み寄る。
「ブラックグループなんて、必要ないのよ!」
黙ってカーレイルを見据えていた犯人が、突然に微笑を浮かべる。
「フッ・・・、どうかな?」
「!!動かないで!」
犯人はカーレイルに向かって歩き始めた。カーレイルは驚いて体をこわばらせ、銃身を固定する。
「動くと撃つわよ!!」
犯人に静止する様子はない。カーレイルは体が震えてくるのを感じた。
(わ・・・私には撃てない・・・どうしても・・・)
急所を外したとしても、生身の人間を撃たなければいけない予想外の事態に、一瞬動揺した。
「うあああああああ」
犯人が突然、大声を張り上げながらカーレイルめがけ走り出した。
バシュウ
驚いた拍子にカーレイルの指は引き金を引き、空気を巻き込みながら銃弾が発射された。犯人も思わず冷や汗を感じた。弾は肩を
かすめて通り過ぎていった。
「そんなもの・・・必要ない」
犯人はショックで身動きの取れないカーレイルに近付き、拳銃を払い落とした。犯人を見上げるカーレイルの怯えた瞳。
(体が動かない)
犯人と息がかかるくらいに近寄られ、カーレイルは体の震えが止まらない。犯人はカーレイルの胸の豊かな膨らみに手を伸ばした。
「あっ」
恐怖と緊張にこわばっている体がビクッと反応する。サングラスをかけた読み取れない表情と、スーツ越しに乳房を掴む手の力が、
カーレイルに伝わってくる犯人の情報である。
「美しい・・・」
犯人の感嘆にも似た言葉がカーレイルの耳を打った。次の瞬間、全身の神経が強い感覚に引き付けられるのを感じた。
「!!」
突然の抱擁。相手に密着されカーレイルは驚きながら、半ば蕩けたような表情で耳まで熱くしていた。
(な、何?この温かさ・・・)
カーレイルは抱き合ったまま交差している犯人の横顔の様子に違和感を感じ、またおかしな感覚にとらわれた。
(普通の男とは違う何かがこの人には・・・ある・・・)
カーレイルの体から力が抜けていった。スーツを脱がされても抵抗しない。なすがままの様子が、犯人の心の奥の加虐心を煽った。
「あはあっ」
犯人は背後から、シャツ姿のカーレイルの胸を両手で手の平いっぱいに掴むと、指を食い込ませながら乱暴に持ち上げた。
「やめて・・・」
カーレイルは絞り出すように言った。
「おおっと・・・・・・そんなにBLACK GROUPが嫌いか?」
胸を掴んだままカーレイルの背中に体を押し付け、怯えを楽しみながら犯人が、言う。
「当然よ・・・」
カーレイルはそう言うと、犯人に両肩を押さえられ振り向かされた。
「なら覚えておいてくれ」
声色が真剣になる。
「えっ・・・」
「私は・・・シリスだ」
犯人の名はシリス・・・
(シリス・・・)
カーレイルの頭の中にその言葉が響いていた。
「ぼくはきみの事をもっと知りたい・・・」
サングラス越しのシリスの熱い視線。
「だが今は敵だ!!」
ガッッ
「ああっ!」
シリスは突然豹変しカーレイルの頬を殴りつけた。
「ううっ・・・」
カーレイルは痛みによろけた。
「こうもする!!」
そう言ってシリスはなんの躊躇もなく、尻もちをついたカーレイルの股間を踵で踏みつけ、捻った。まるで暴力ですら
愛情表現であるかのように。
「んあっ・・・」
自分の体が弄ばれている事に対する悲痛の叫び。
「君にはBLACK GROUPの捕虜になってもらおう・・・」
そうして尾骨の形も露わに、地面に長くセクシーな脚を横たえるカーレイルに足を近付け、威圧を加える。
「いやっ」
カーレイルは体を仰け反らせて拒絶の反応をとる。その時。
「おーいカーレイル!!どこだ!!」
近くで声がした事にシリスは気付いた。拳銃を持った男が現場に駆けつけたのはそれと同時だった。
「あっ!!」
「!!」
シリスと男の目が合う。次に男の目に飛び込んだのは、尻を突き出した乱れた姿でシリスから逃げようとしている
カーレイルだった。
「カーレイル!!」
「えっ」
カーレイルがやっと同僚の声に気付く。
「うっ」
一方、シリスは動揺している。
「マ・・・マックスウェイ!!」
安堵の表情。マックスウェイとシリスは互いにけん制するように見合ったまま膠着していた。
「そこのサングラス・・・・・・シリスだなっ!!!」
「・・・・・・マックスウェイかっ!」
シリスがマックスウェイの名前を呼んだ事に、カーレイルは疑問の色を浮かべる。
(えっ)
「失せろ!シリスッ!!」
マックスウェイは剣幕を使ってそう言った。
「・・・・・・」
シリスは僅かに沈黙した後、
「フッ・・・・・・お言葉に甘えるか」
と余裕で応えた。
「死にたいのか?」
マックスウェイは困惑の混ざった険しい表情でシリスを睨んだ。
「また会おうカーレイルッ」
そう言い残すとシリスは踵を返し、長髪をなびかせながら去っていった。カーレイルはマックスウェイが周囲を警戒
している間に衣服や髪の乱れを整えた。
「大丈夫?カーレイル」
危険が無い事を確認すると、警戒を解いてマックスウェイが気遣う。
「うん・・・ありがとうマックスウェイ」
きれいにセットされたウェーブヘアーが自立する女の態度に説得力を持たせている。
「何もされなかった?」
そう訊ねられてカーレイルの脆い強がりが崩れてしまう。
(ハッ)
シリスに迫られた事を思い出し、頬を紅潮させる。まだ体に感触が残っている。
「う・・・」
カーレイルは思わず身をよじらせて悶えた。
「本当に大丈夫か?」
マックスウェイが心配そうに見つめる。
「・・・何でもないわ」
そう言って微笑むカーレイルの瞳はわずかに潤んでいた。
カーレイルはデスクに向かい、キーボードを打っていた。次々とブラウザが持ち上がり、文字列や写真を表示していく。
捜査線上で犯罪者から暴行を受けた事は、努めて忘れようとしていた。世の中では女性が商品のように売買され、
非人間的な扱いを受けている事は知っているし、自分はGIGANICになった事でそれを免れているだけ幸福だと考える
しかなかった。それよりも頭の中にあるのはマックスウェイに対して生じた疑念であった。なぜあの時犯人を逃がした
のか。自分の救出を第一に考えたのだろうか。GIGANICの組織には多額の投資がなされ、シリスのような例外を除き、
ローカルの警察が太刀打ち出来ないような凶悪犯に対しての圧倒的な検挙率を誇っている。合理的に考えれば、そのGIGANIC
が遭遇するようなリスクは、避けなければならないのであり、組織はいたずらにリスクを生み出してはならない。しかし
マックスウェイとシリスとの会話が気になる。会話の態度が、まるで面識がある者どうしのようであったからだ。犯人逮捕
ばかりを優先させるべきでないとはいえ、マックスウェイの対応は、犯人を逃げさせたと捉えられてもおかしくない。
カーレイルはそう思い、マックスウェイの経歴を洗いざらい調べようとしていた。職務上のパートナーである自分に何か
隠している事があるのではないか。
「何をしているんだい、カーレイル。」
ここはGIGANICの仮居住施設。プレハブの簡素な建物だ。事務を終えて戻ってきたマックスウェイが書斎の入り口に立って
いた。
「ちょ、ちょっとね・・・もういいわ、休もうかな」
カーレイルはマックスウェイに気付かれないようにコンピュータの電源を落とした。
広々とした居間の革張りのソファーに、バスローブ姿で腰掛けるカーレイル。
「ねえ・・・マックスウェイ・・・」
傍で缶ビールを傾けて飲んでいる後姿の長身のマックスウェイに、真剣な口調で話し掛ける。しかしカーレイルの美しさが
先行して、男にとっては緊張感を感じない。
「あなたとシリス・・・どんな関係なの?」
振り返ったマックスウェイはその質問を軽く受け流す。
「そんなに大きな関係はないよ」
マックスウェイはカーレイルの背後に回り、バスローブを肩から外した。
「そんなこと、いいんだよ。」
「えっ・・・」
体から落ちるバスローブが胸の膨らみに引っかかり、谷間を強調するようにはだけさせた。マックスウェイはカーレイル
の後頭部に鼻を押し付け、髪から麗らかな雰囲気を堪能した。うろたえるカーレイルに口づけをする。カーレイルが裸に
なる。才能と美貌を裏打ちするような肉感的な美しい体つき。マックスウェイの手が素肌をまさぐる。容易く形を変える
柔らかい胸。
「うあっ」
女に剥かれていくカーレイル。自分の主張がセックスに持ち込むことでうやむやにされていくのに嫌だった。
「やめて!マックスウェイ!!」
カーレイルはソファーを挟んで覆い被さるマックスウェイを制するように呻くような声を上げた。
「!!」
マックスウェイは自分の愛撫が拒否された事に心外、といった様子だった。
「ご・・・ごめんカーレイル」
カーレイルはどこか疲労感のようなものを感じ、無表情にその言葉を受け取った。
(シリス・・・だったっけ)
マックスウェイに対する感情から逆行するかのようにシリスの事を思い出す。
(あの人には・・・マックスウェイとは違う温もりがあったわ・・・)
「BLACK GROUPの抵抗が、いつもより・・・激しいな・・・」
カーレイルとマックスウェイは銃声の鳴り止まない市街戦のただ中にいた。枯れた街路樹や廃墟の壁の間から銃撃の
応酬が続く。またGIGANICの一人が倒れた。相手は慣れた手つきで重火器を扱う。銃弾の雨の中表情ひとつ変えずに、
青年が反動を受けながらガトリング砲を放つ。
「がはあっ」
驟雨のように腹に命中する。スーツの中には行動の妨げにならない薄型軽量の特殊な防弾チョッキを着込んでいるが、
致命傷は免れず、痩身の男は音を立てて後ろに倒れた。
ズギュウン
「!」
建物の壁に隠れて様子を見る二人の方にも、銃弾が飛んでくる。マックスウェイは背後にいるカーレイルが様子を見ようと
身を乗り出すのを手で制した。
(この辺りには、クスターナの秘密基地があったな・・・そうか・・・それでそんなに抵抗が激しいのか・・・)
マックスウェイは何かの考えを頭にめぐらせる。
(この前のシリスという男・・・いたら私が倒す!!)
カーレイルは現場の刑事としての雪辱を果たそうと燃えていた。
「おれはウラから回り込む!!カーレイルはそこを頼む!!」
そう言ってマックスウェイは走っていった。
「う、うん!!」
カーレイルの敵はシリスだけではない。作戦行動も行わなければならない。
(今日は撃つ!!)
しかし迷いを振り払うようなカーレイルの決意は、突然の銃声により打ち消されてしまう。
「あっ!!」
カーレイルの手から拳銃が弾かれる。背後から撃たれたらしい。
(しまったっ!!)
「立場が逆転・・・したなカーレイル」
さらにまずい事に銃を構えて木陰から現れたのはシリスだった。
(シ、シリス!!)
カーレイルの顔が蒼白になった。
「また会えてうれしいよ。」
シリスの微笑みに、カーレイルの顔は紅潮して怯えた目を見せていた。
「こ、来ないで・・・」
「動くな!!!」
シリスは落ち着かせるようにそう命令した。
「いくらキミでも・・・いちおうGIGANICだからな。」
そう言ってカーレイルの眉間に銃を突きつける。カーレイルは恐怖に震え、声も出ない。瞳には明らかに困惑の色が表れている。
「私の思うつぼなんだよ、キミは。いわゆる人形だね・・・フフフッ!!」
シリスは優位に立った興奮に声を上ずらせた。カーレイルの目には重い拳銃の色が飛び込んでいた。
マックスウェイは人気の無い住宅地を静かに歩いていた。やがて通りに面した場所にさしかかる。屈んで様子を見る。土嚢が積み上げ
られ、そこに若い痩せ型の男とジャケットを着たロングヘアーの女が、頭上を突き抜ける銃弾から隠れていた。
「おいカツミほらあいつだ」
男がこけた頬に笑顔を浮かべて女に目配せした。
「なんだ?」
カツミが目線の方向に振り向く。
(あっ!!)
カツミの顔から緊張が解ける。
(マックス・・・)
マックスウェイは親指を上げてポーズをとる。カツミの胸が熱くなる。
ガガガガガガ
男はライフルを連射してGIGANIC達に一気に命中させていった。
ちゅっ
再開の嬉しさにカツミはマックスウェイに抱きついてキスをした。
「びっくりするなあ」
マックスウェイは嬉しさと気恥ずかしさを見せる。マックスウェイを上目遣いで見つめるカツミの背後には、スーツにネクタイを緩め、
手袋をしたレジスタンスのようないでたちの2人の青年、ジェイとキムがいる。そして後ろの壁に寄りかかって押し黙ったようにしている
痩せた男がジンだ。
「よく生きてたなマックスウェイ!!」
「また会えてうれしいぜ」
そこにはGIGANICにいる時とは違う顔をもったマックスウェイがいた。
「ああ・・・俺もだ!!」
一方、カーレイルはシリスによって人目につかない場所で拘束されていた。シリスに壁際まで追い込まれ、グラマーな体つきをさらけ
出している。
「ふあ・・・」
口に銃口を入れられ、だらしない声を出す。舌が粘液を帯びてあやしく光る。カーレイルの恥ずかしい姿を見てシリスは思わずにやりと
笑みを浮かべていた。
「首をとってやろうか・・・」
シリスは銃を首に突きつけ、嫌がるカーレイルに冗談半分でそう脅す。カーレイルは拒否の意思を示すように顔を背けた。シリスは銃を
そのまま胸へ下ろしていく。そして銃身を引っ掛けてスーツを脱がす。胸の膨らみを強調するシャツの皺。引き締まったウエストや腕とは
不釣合いなくらいに大きな胸は、体を弄ばれる痴態を否が応にでも盛り上げてしまう。シリスはシャツの中に銃を入れる。
(いやっ!!)
「!?」
カーレイルは我慢の限界だった。銃身を上から押さえつけ、動きを止めさせようとした。
「やめろ!!」
シリスがそう叫んだ瞬間、銃が暴発した。
「!?」
弾道はそれたがシャツの胸の部分がかすめて破れ、豊かな谷間が露出した。カーレイルの体は恐怖で硬直した。
「はずみで撃っちゃったよ」
シリスは恐怖でこわばるカーレイルにからかうような微笑みを浮かべ、硝煙のにおいの残る銃口を谷間に押し付けた。抵抗しないのを
いいことにシャツの中にすべりこませて乳房をいじる。変形する乳首。
(いやっ・・・・・・乳首に銃口の感触が・・・)
「マックス、きみはブラックグループに戻ることになった」
「えっ!!」
その唐突の言葉に、さすがに戸惑いを見せるマックスウェイ。
「またおれたち5人そろっての仕事が出来るぞ!!」
マックスウェイの動揺の意味を斟酌する由も無く、ジェイは手続きのように確認の視線を送る。
「あ、ああ、まあな」
(そうか・・・カーレイルともお別れなのか)
一瞬脳裏によぎった感傷。
「よーし、力を合わせてがんばろーぜ!!」
ジェイの両肩に手を置き、ブラックグループのマックスウェイとしての振る舞いに切り替え、気合いを見せる。周りのメンバーも笑顔を
見せて彼の復帰を迎え入れた。
「ジェイ・・・ちょっと」
マックスウェイはカツミ達に背中を向けてジェイを呼んだ。
「なんだ?」
特に興味などの感情を示す事も無く応じる。
「あっちのパートナーに別れを言ってきていいか?」
ハッ
その言葉だけが切り取られたように側にいたカツミの耳に入った。
「うん・・・いいよ。」
敵側の関係者を口封じするぐらいに解釈したのだろう。声色に詮索の様子は無い。
(ええっ・・・)
だがカツミは困惑の表情を浮かべてマックスウェイの方を振り向いた。
「サンキュー・・・ごめんな迷惑かけて」
「私も行くわ!!」
「わっカツミ・・・」
カツミは声を張り上げてマックスウェイに歩み寄った。
「どうしてだ?」
「だって・・・せっかく会えたのに・・・もう別れてしまうのはいやよ・・・」
カツミは目を閉じそう言ってマックスウェイの胸元に体を寄せた。
「・・・・・・」
マックスウェイはどこか呆然とそれを受け、何かを考えているようだった。
「一緒に行こうか。」
マックスウェイはカツミの肩に手をまわし、優しい言葉を投げかけた。
「うん・・・・・・」
「うああっ」
羞恥に熱くなる体で壁際に逃れるカーレイル。シリスによって乳首まではだけさせられている。
「ハハ・・・」
「むぐうっ」
背後からカーレイルの体をおさえ、胸をいじくりまわしながら股をムリヤリ広げる。カーレイルは一層の羞恥を感じ思わず手を
上げ、シリスの頬を張った。
ビシッ
「!」
サングラスがはじき飛ばされる。シリスは反射的に目をつぶりそれを受けた後、驚きに目を見開いた。
「えっ・・・・・」
カーレイルは手を上げたまま驚きの声を上げる。シリスの瞳と視線が合う。
(まさか)
そのまま視線を離せない。
(このひと、女性・・・?)
「オマエは人形だと言ったハズだっ!!」
ビリッ
「いやっ」
逆上したシリスにシャツの破れ口を広げられ、完全に前がはだける。
ハア、ハア、ハア
動悸を見せるカーレイルに片頬で笑みを浮かべ、胸に顔を近づけて乳首を舌でこね回した。
「あんっ」
「やっぱりキミは全てが美しい・・・・・・」
「んあっ」
銃口をスカートにつつまれた股にあて、怯えるカーレイルを弄ぶ。
「くう・・・」
完全に上半身を裸にされた状態で頬を赤らめるカーレイル。
「あっ」
慌てて手で止めようとするも、カーレイルの下着は腰から脱がされていく。本当の恐怖がカーレイルの感情に見え始めた。
するっ
シリスの手がカーレイルの生脚の間に割り込み、一糸まとわぬスカートの中に近づく。
ドキドキドキ
カーレイルはその様子を信じられないといった表情で見る。
ぐにゅ
スカートが腕で持ち上げられ、露出したフトモモのつけ根に指が到達した。
(やっぱりガマンできない!!)
頬を紅潮させたカーレイルは股をまさぐるシリスの手をはじいた。その瞬間。
ドン
「抵抗するなって言ったのに、3回も・・・死んでもらおうかな。」
ジャカ
眉間に銃口を突きつけられ、壁に後ずさりする。
「・・・・撃て!!」
カーレイルは眉を怒らせて、拳銃を突きつけられた状態でシリスを睨んだ。
「さっさと撃て!!」
乳房を露出した状態で一転、そう強がる。
「フフフフ!!そんなにせかすな・・・ちゃんと撃ってやる!!」
表情をピクリとも動かさないシリス。
「はやく・・・撃ちなさいよぉ・・・」
「フフフフフ・・・」
拳銃に押されるように壁にもたれ、へたり込むカーレイル。もつれるようにその上にまたがり、笑みを浮かべるシリス。
「ぐうっ」
ドクン
(まだ・・・死にたくない!!)
カーレイルは歯をかみしめて目を強く閉じた。
「・・・・・・」
銃を突きつけたままそれを黙って見つめるシリス。
(もう・・・戦うのはいや!!)
カーレイルの表情がほつれ、涙を浮かべた。
カチッ
「?」
引き金を引いた音だけが聞こえ、涙の筋を留めながらあっけに取られるカーレイル。
「ハハハハハハハ!!」
シリスの高笑い。
「ハハハ!!弾は入っていないんだよ!!」
そう言ってまだ恐怖の余韻を残す彼女に近づき、瞳にたまった涙を指で拭う。
「涙まで流して・・・そんなに死にたくなかったのか・・・」
「・・・・・・」
間髪入れずに上腕を掴み、胸に顔を埋めてなめ始めた。
「う・・・ああっ」
シリスの動きに応じて容易く形を変える豊かな胸。
「んぐっ・・・うんっ・・・んあっ」
その間にも一方の手でスカートをまくり上げていく。
「んあっ」
上体を投げ出す形になったカーレイル。
「いや・・・」
両脚を肩にかかえられ、腰を持ち上げられる。慌ててシリスの膝に手を添え、姿勢をもたせる。
「いや・・・ああっ」
シリスはカーレイルの耳に顔を近づけ、愛撫を与える。
「苦しい・・・」
そのとき、地面を探る手が冷たい金属の感触に当たった。
「!!」
スッ
「離れて!!」
素早く銃を握り、覆い被さっているシリスに突きつけた。
「ちイっ」
シリスに動揺が浮かぶ。
「動かないで!!次は必ず撃つわ!!本当に!!」
上着を着直し迷いを振り払う。
タイル敷きの通りを静かに移動する革靴とハイヒール。
「カツミはちょっと・・・ここに隠れて待っていてくれ」
銃を構えた手でカツミを制した。
「分かったわ」
(人がいる気配がする・・・)
銃を突きつけるカーレイルの向こうの壁に、壁越しに様子を伺うマックスウェイの姿がある。
シリスは絶対絶命の状況に追い込まれていたが、なおも不敵な笑みを浮かべていた。
(カーレイル・・・私を殺すのはムリだ。私は神の意思によって生きているんだ!必ず何かが起こるっ!!)
(よしっ!!)
シリスの瞳がその決意を表したのとマックスウェイが壁の向こうに飛び込んだのはほとんど同時だった。
「動くな!!」
そう叫んだマックスウェイと振り向いたカーレイルの目が合う。
「あっ!」
「!!」
マックスウェイの驚きをよそに、カーレイルはシリスが逃走するのに反応する。
(案の定!!チャンスッ!!)
「うっ!?」
シリスはマックスウェイに向かって突進して行った。
「どけっ!!」
(あいつが逃げる!!撃たなくちゃ!!)
カーレイルは拳銃を構えた。しかし・・・
「シリス・・・」
「フン」
ドン!
うろたえた様子のマックスウェイへの返事代わりに、すれ違いに肩をぶつけた。
(またも逃がした・・・!!)
無表情に沈むカーレイルと、立ちつくすマックスウェイが残された。
「カーレイル・・・」
「・・・・んで撃たなかったの・・・」
「そ、それは・・・」
マックスウェイはその質問にハッとしたが、言い訳めいた事しか言えなかった。
「もういい!!」
カーレイルは涙をはねながら顔を逸らした。
(カーレイル・・・)
旧市街の一角から歩き去るロングヘアーでスタイル抜群の女性の背中を見つめるマックスウェイ。彼に歩み寄るカツミ。
「カーレイル・・・」
(・・・・・・・・)
そうつぶやくマックスウェイに対し何かを考えた。
「マックスウェイ・・・パートナーって、あの人?」
マックスウェイの表情が変わった。
「ち、違うよ・・・ただの一般人じゃないかな」
その言葉をカーレイルは背中で聞いた。
「!・・・」
(マックスウェイ・・・私達、本当にもう、おしまいなのね・・・)
目に涙を浮かべていた。
(さよなら・・・・・・・)
葉の舞い落ちる緑道を、静かな足どりで去っていった。マックスウェイのもとにはブラックグループの仲間達が合流し、カツミとジェイ
が話している。
(これでいいよカーレイル・・・僕らは違う組織の人間・・・いつかはこう別れる運命だったんだ・・・)
マックスウェイはカーレイルが去っていった道の方をいつまでも見つめていた。
STORY 2 新たなる明日
21世紀もかなりの年月が経過し、様相を大きく変えていった近未来のJAPAN・・・そこは様々な人種の混在する"カオスシティ"に
なっていた。超高層ビルが森のように生い茂ったトーキョーシティーでは、人身売買のマーケットが築かれ、女性は抱かれるための道具
とされた。生きるために必要な全ての物をコンピュータがつくり出すこの時代に学校という教育機関は無く、ギャンブルや人身売買で金を
手に入れた者はビルの上層で暮らし、そうでない者は黒い空気で覆われた下層で暮らしていた。シンディ・カーレイルは国際警察ギガニック
に所属し、男やレズビアンの道具になるのをまぬがれていたのだが・・・
「この服は何なのですか・・・?」
カーレイルは広々とした応接室に呼び出されていた。奥には革張りの椅子に足を組んで腰掛け、テーブルのワイングラスを掴む白スーツ姿の
若い男がいる。おそらく人望もコネもあるキャリアだろう。
「キミがカーレイルか・・美しさはうわさに聞いているよ」
目にかかるくらいの前髪の下から、二枚目の顔つきで上目遣いをする。
「発注してもらった服と違うのですが・・・なぜこんなミニスカートを?」
カーレイルはそのモデルのような体型と大人の美貌とは不釣合いなくらいの、可愛らしさを強調する衣装に身を包んでいた。上は女子高生の
制服のような明るく奇抜な感じのコスチューム、下はスラリと伸びた生脚が痛いくらいに眩しいミニスカート。
「そのサングラスを外してごらん。」
男はカーレイルの訴えを聞き流すように命令した。
「憂鬱な瞳をしているな・・・何かあったのか?」
「あなたに話すような事じゃないです・・・それより、私は私服で捜査したいのですが、なぜこの服を着るのですか?」
男はそれを黙って聞いていたが、おもむろに口を開いた。
「私はカーレイル、キミの直属の司令官に配属された。よろしく。」
「!」
カーレイルの注意がその言葉に向かう。
「キミはテロ対策部隊を離れて潜入部隊へ入隊する事に決まった。」
「潜入捜査ですか・・・格下げですか?」
「・・・いや仕事内容によっては給料は格上げだ」
「しかし仕事内容が・・・」
潜入捜査により、麻薬や武器の密売ルートに直接関わることで捜査性が格段に上がる。しかし察知される可能性も高く致死率はあらゆる
捜査の中で最も高くなった。女性の場合売人になり交渉するのではなく、男性から愛人になるなどして話を聞き出す役割を任される・・・
長い期間の忍耐が必要な仕事だ。
「そういう捜査はその道のプロを充てればいいのでは・・・?」
「いや・・・キミの美しさには男も心を開く・・・キミはプロの素質を持っている」
カーレイルはその褒め言葉を真に受けるそぶりも見せない。
「そんなに甘いものなのですか・・・?」
「ああ・・・男はみなそんなもんさ」
男も自分の意見を譲る気配が無い。
「キミの魅力でメロメロになっちゃうよ」
(甘いよ・・・アンタも。近頃かなり潜入捜査課が死んでる)
「つらい仕事だがさっそく異動だ。部署は3Fの・・・」
「分かっています」
カーレイルはうなだれた様子で応接室を後にした。
(マックスウェイの失踪が私の責任になっているのね・・・・・・私はマックスウェイのせいでこんな事をするはめになってしまった
んだ、クソ)
「あれ、カーレイル、次はどこ行くんだ?」
暗色系のスーツ姿に金髪を逆立てるようにセットした長身の男が扉の上部に手をついて廊下を歩いていたカーレイルに話しかけた。
「あっギリー」
ギリーという同僚から目をそらして言った。
「私・・・今日から捜査・・・潜入捜査よ・・・・・・」
振り向くカーレイル。一瞬の沈黙。
(そうか・・・カーレイルがいなくなるとつまらなくなるな・・・がんばれよ・・・・・・)
同僚に言われたその言葉が頭をめぐっていた。そうしているうちに潜入捜査一課と書かれたプレートのあるドアにさしかかった。
(この部屋に入れば私の今までの国際警察生活は終わり、汚れた暗い潜入生活が始まる・・・・・・)
彼女の脳裏にはかつて私服のスーツに身をつつんでいた新鋭の女刑事の姿がオーバーラップしていた。
ガチャ・・・
「!」
重厚な扉を開け、カーレイルは息をのんだ。
「あんたが新入りのカーレイルちゃんね」
「・・・ええ」
「ココは厳しいぜ。覚悟しな」
そこには肩まで伸びた長髪の男と背中まである黒髪の女がいた。しかし。
(上・・・半身・・・裸!?)
部屋にいる男女はその事を何ら気にしていないようだった。
「・・・まあ美しさはクリア、合格だな。ココではココのルールを守ってもらうぜ!」
男女はカーレイルに笑みを見せている。
「まずその布飾りを取りな!ルールだよ」
ゴク・・・
押し黙るカーレイル。
「脱いだらそれで仲間入りだよ」
男が一緒にいる女の片胸を背後から掴みながら言う。女も別段気にせず微笑む。
「なんなら俺が脱がしてやろうか?」
男はカーレイルの胸元に手を差し出す。
「ぬ・・・脱ぐわ!!」
慌ててそれを止める。
「・・・恥ずかしいわ、むこう向いてて」
「うるせえな、恥ずかしさとか余計な感情は捨てろ!!」
男はカーレイルの言葉を打ち消すように言った。
「・・・・はい」
「聞き分けがいいじゃねェか・・・」
裸の男の前でカーレイルの衣装が床に落ちていく。
「脱いだわ・・・まだだめなの?」
コスチュームの上着の飾りを外しただけだった。
「バカ全部脱ぐんだよっ」
すかさず男の叱責がとぶ。
「いいか!!もう昨日までのキャリアはカンケーねェ、オマエはシロウトだ、マジでやんなきゃミスって死ぬ」
そう言われカーレイルは飾りを腕から滑らせた。
「私は元キャリアウーマンだなんて呼ばれたくないわ」
そして上着に下から手をかけ、勢いよく持ちあげてブラジャーにつつまれた豊満なバストを露わにした。
ドキドキ
鼓動が高鳴る。ブラからはしっとりと汗ばんだおさまりきれない程の胸のふくらみと谷間がのぞいている。
「その調子」
自己主張するような突起した乳房を露出しながら、背後から男の肩に手をかけ、身を乗り出してストリップの様子を
観察する女。
(だめッ・・・ブラックグループのシリスに襲われてから、他人に裸体を見せるのがコワイ・・・)
「キミはオレのオモチャなんだよ!!」
「いや・・・」
グニ
「いい体だ・・・・・・美しいよカーレイル・・・」
ニュム
「・・・んあっ、ううっ、んっっ!!」
「キモチいいだろ!?」
「ああっっ!!」
ハア、ハア、ハア、ハア
「オラア、股開げねェと撃つぞ!!」
「もうやめて・・・」
それから幾日かたち、カーレイルは自室のベッドで寝込んでいた。つらい捜査の日々に疲弊していた彼女に追いうちをかけたのは、
行方不明だったマックスウェイとあるとき突然に再会し、微笑みの返事に拳銃を突きつけられた事だ。なんとか味方の助けによって負傷は
免れたものの、精神的ショックが大きく、今まで溜め込んでいた疲れが一気に体にのしかかってしまったようだった。
(私は何を信じていけばいいの・・・?)
超高層マンションの一室。都市の像をぼかすような白く淀んだ空から雨が落ち、採光のためビル群に面した壁と天井の境にある斜めの
ガラス窓からも雨滴が伝わる。薄暗がりに佇む無音の部屋に着信を示す電話機の赤い光が点滅するが、起き上がる気になれない。多分彼女
の体調を心配した同僚からのものだろう。混濁した意識のまま夜を迎え、周囲の色は黒一色におちた。偏光フィルターを作動しない窓にも、
時折ヘリの光が通り過ぎるのみだ。
「・・・・・・」
カーレイルにドアがスライドする音に気付き、身構える余裕は無かった。
「カーレイル・・・」
「エッ?」
カーレイルは入り口の人影に気付き、裸姿の自分の胸をシーツで覆い隠した。
「会いたかったよ・・・」
動く影のその言葉からは押し付けととれる程に好意が感じられる。
「どうして・・・」
その疑問に対し、シリスは着衣を脱ぎ、カーレイルのベッドに潜り込んだ。そして慰めの刻を過ごした。
そんな2人のいるマンションに侵入者がいた。それはマックスウェイだった。彼は一直線にカーレイルの部屋へと向かって行った。
「!」
マックスウェイがカーレイルの部屋に入った時、彼女の他にもう一人、誰かがいる事に気付いた。しかもそれは女のようだ。
あっ!!
マックスウェイは声にならない叫びを上げた。それがシリスだったからだ。驚きを隠せない彼に気付いたシリスは、無言でカーレイルと
いたベッドから立ち上がった。一糸纏わぬ裸体。
「私は女だ。私の体をよく見ろ。」
彼女の美しい線をした体は、まぎれもなく女の体だった。マックスウェイは驚きを隠せぬまま、その場を去った。
シリスとの夜の出来事から数日が過ぎ、ショック状態から立ち直ったかのように見えたカーレイル。彼女はビルの間を通る空中に設けられた
道路の歩道を歩いていた。空中の道とそこから伸びるビルの隙間に、遥か下の地面の暗闇がある。人間は3次元的な空間利用を可能とした。
「あ・・・!」
カーレイルの歩く道の先に、見覚えのある姿が側に車を止めて立ち、自分を待ち構えている。
「・・・・・・」
再びマックスウェイが現れたのだった。カーレイルは殺す事も、抵抗する事も出来なかった。マックスウェイは、カーレイルの服を
はがした。シャツを乱暴にやぶった。マックスウェイの変わり様に悲しくなったカーレイルは、なされるままに、全裸のまま車に乗せられた。
そしてマックスウェイの運転で連れ去られて行った。
彼の乗るベンツを、一台の車が追いかけて来た。ポルシェに乗ったシリスである。大都市と外部を連結する明け方のハイウェイで、カーチェイス
が始まった。シリスは自分の車をマックスウェイにぶつけ、横転させた。2台の走行が止まり再び静まり返った空と地。車の中から出て来た
シリスは、サングラスを外し、隠してあった胸の膨らみも、今はさらけ出している。腰にはズボンではなく、スカートをはいている。シリスは
マックスウェイの車に近寄った。その時!!マックスウェイが後ろからつっこんで来た。シリスはアスファルトの上に倒れた。マックスウェイは
シリスの手を強く掴んで、こう言った。
「おまえが女だったとは、全く知らなかった。でも・・・確かに女らしく見えるぜ、女に戻ったんなら、女の声を出してみろ。」
シリスはマックスウェイにのっかられて、身動きが取れなかった。マックスウェイはシリスの頬を張った。何度も張った。シリスがぐったり
すると、マックスウェイは、シリスの胸のボタンを外し、脱がせた。シリスは助けを呼ぼうとするが、周りにはカーレイル以外は誰もいない。
マックスウェイはシリスのシャツをつかむと、強引に肩まではがした。
「ハア、ハア」
マックスウェイは荒い息を出しながら、シリスの乳房をつかんだ。シリスはがまんしていた声を、出してしまった。
「ああっ」
マックスウェイは笑った。
「アハハハ」
つかんだ乳房を、上下に揺さぶった。
「あううっ」
「ハハハ」
「んあっ」
「アハハハ」
マックスウェイは笑顔を見せながら卑劣な行為に及んでいる。
「そうか、シリス。おまえは今まで男として生きてきたから、胸をもまれたことも無かったのか。だから敏感なのか」
「んぐっ」
「よーし」
マックスウェイはシリスの腰をつかんで、スカートを下に引っ張った。
「アハハハ」
マックスウェイは、また笑った。シリスがはいている下着は、間違いなく女性用のパンツだった。マックスウェイがそのパンツを脱がそうと
したその時。
「マックスウェイ、動くな!!」
カーレイルの声。マックスウェイは驚いて、こう言った。
「きみに俺は撃てない!」
カーレイルは言った。
「あなたはなぜブラックグループに入ったの」
「さあな」
「とぼけないで!」
カーレイルは持っていた拳銃をさらに突きつけた。
「分かったよ、教えてやろう」
マックスウェイは言った。
「俺は、ブラックグループのスパイだったのさ。」
カーレイルは驚きで、倒れそうになった。気を取り直して、全裸のまま、銃を構えてこう言った。
「うそ・・・うそよね。マックスウェイ。嘘と言ってよ」
「本当だよ!!」
マックスウェイはカーレイルの方へ走った。その時であった。シリスの撃った弾が、マックスウェイの頭を貫通したのは。
「カーレイル、大丈夫か」
そう言ったシリスの声は、女の声だった。
「あなたこそ、大丈夫?」
「心配するな」
シリスは頬を赤らめて、そう言った。
「シリスさん・・・でしたよね」
カーレイルはそう言うと、シリスの事を抱きしめた。
「私の事を、どっかへ連れて行って下さい・・・」
シリスは考える事も無く、こう言った。
「私は、これから女として生きて行くつもりだが、それでもいいのか。」
「はい・・・」
カーレイルはシリスの、男っぽさの中にある純真な女の姿に憧れていた。シリスは全てを悟ったように、こう言った。
「カーレイル、私は、これからも男として生きていく事に決めた。だから、一緒に行こう。」
「ありがとう・・・」
二人は抱きしめ合って、キスをした。そのまま、アスファルトに横たわって、交じっていた。二人の向こうには巨大な都市が見えていた。
THE END
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